毎年参加してきた兵庫県三田市のエス・コヤマ:小山シェフの新作セミナー。2017年は忙しさに紛れて失念。 バレンタインの期間は阪急でも毎年いくつか小山シェフが講師のセミナーが開催されますが、そちらも日程的に参加できそうなのは、ヒトコマしかなくて、内容もよく読まずに申し込んだのが「ショコラは世界を越える~感性と感性の出逢う場所」というセミナー 2017の阪急の有料セミナーは、小山シェフと世界的なチョコレート品評会の発起人を交え、エス・コヤマのボンボンショコラ6つを試食がてら、一粒のチョコレートに込められた想いだとか、技術的なこと、はては、カカオを巡る諸事情まで、様々なことが話題にのぼる、チョコレートの濃さに勝るとも劣らない濃ぃいセミナーでした

I.C.A

I.C.A という組織の創設者である、マリセル・プレジィラ女史・マーティン・チリスティ氏のお二方と、小山シェフの3人での合同セミナーなんて形式のも初めてだったのですが、他のかたとのかけあいや、チョコレート業界の様子などが垣間見えて、沢山の新発見があり、面白かったです。 I.C.Aとは、「インターナショナル・チョコレート・アワード:International Chocolate Awards」の略で、フランスの「サロン・デュ・ショコラ」のような、ショコラティエ中心の、食べるチョコだけでなく、カカオの産地や農家までをも含めた、チョコレートマーケット全体を盛り上げていこう、としてはじまった、チョコレートの世界的な品評会です。 2017年の阪急のバレンタイン催事には、3人の発起人のうちのお2人が参加され、なんと、日本ブランドへの授賞式まで開催されることからも、阪急のチョコレートにかける本気度がわかろうというもの。

チョコの試食作法

今回はエスコヤマの過去の作品も含めて、試食させてもらえましたが、まず、それぞれの作品へのウンチク、熱意、ポイントなど様々なレクチャーが披露されたあと、おもむろに半分に切って、試食~~ はい、お話がおわるまで、試食はお預けです。ボンボンショコラがいくつもあるので、口直しのために、ちゃんとお水も用意されているのも、小山流ですね。いつもはチョコをカットするためのナイフを持参するのに今年は忘れちゃったため、綺麗にカットできずに残念。 この時、同時にシェフも、マリセル女史も、マーティン氏も試食され、それぞれに感想なども述べられましたが・・・ マリセル女史が熱~~く語りだす。。。と、止まらないので、通訳のさつたにかなこ女史が、もう、大~変!! マーティン氏が僕にも語らせろ!と物静かに抗議して、ちょびっとお話されたときもあったけど、そのあとは、またマリセルさんの言葉の洪水・・・ 皆様、ほんっとうにチョコレートに情熱を傾けてらっしゃるんだなぁ~と、感動。 小山シェフの見事なまでのインスピレーションと、それを実現していく力量も素晴らしいですが、それを、ここまで繊細に、確実に受け止める方々がいて、また、世界が広がっていくんだな~と思いました。 出席者の方も、なかなかの目利きで、小山シェフが「そこまでわかるんだ~」と驚いていたくらい。 いままでも常々、日本は「受けて側」の消費者のレベルがシビアで高いから。世界の舞台にでていけば、相応の評価がもらえて当然なんだ、と話してきた小山シェフ。日本人の繊細な感性ってやっぱりすごいなぁ~って、自画自賛ってのはちょっとニュアンスがちがうかもしれませんが、「どんなもんだい」みたいに、I.C.A のお二人にちょっとお国自慢されてたのが可愛かった。

試食に出たボンボンショコラ

Genesis(いちじくの #&枝スモーク)・P.C.J(万願寺唐辛子のプラリネ)・金木犀×チャンチャンマイヨ63%・醤油ヌーヴォー・コブミカンの葉・抹茶&プラリネアマゾンの6種 P.C.J  以外はI.C.A 受賞作品。P.C.J は2013年度のC.C.C最高位受賞作品 ワタクシがこの中で一番すきなのはP.C.Jです。 Genesisと、P.C.J  はともにマリセルさんとの距離が縮まるきっかけになった記念碑的な作品だそうです。マリセルさんはラテンアメリカのシェフであり、唐辛子の研究者でもあるからですが、そのことを、当時、小山シェフは全く知らなかったので、まさに「ご縁」ですね。

Genesis(いちじくの #&枝スモーク)

Genesisは聖書の「創世記」をモチーフにした作品。 イチジクの枝を燻したスモーク香と、イチジクの葉を乾燥させてから、生クリームに煮だして香りづけしたものをつかったボンボンで、まったくイチジクの果実を使わずにイチジクを表現したくて作ったそうです。アプローチがマニアックですねぇ(^o^;) で、マリセルさんから、「低木の森が燃えるような香りがセクシーでエキサイティング」だという感想が届いたそうです。 今回マリセルさんは別のセミナーで「モーレソース」の作り方もレクチャーされるのですが、キューバ生まれで、ラテン系の料理ではスモーキングはとっても重要だそうで、イチジクの枝のスモークされたダークなフレィバーが、いたく気に入ったそうです。 あちらではイチジクの葉を、デザートに使うのだそうで、なじみがあったんだけど、チョコレートに使えるとは思っていなくて、これほどミステリアスな体験は初めて。口の中で、刻々と変化していく香りの変遷はまるでフレイバーの旅をしているようで、まさに「チョコレートの最高傑作の一つ:One of the Top of the Chocolate!」と、立て板に水のごとく、絶賛されたのを、さつたにさんが、汗だくで訳されてました(^o^;) 2014年度のアメリカでのシルバー受賞

P.C.J(万願寺唐辛子のプラリネ)

万願寺唐辛子を塩漬けのお漬物にしてから、フリーズドライしたものを、プラリネに混ぜ込んだもの。2013年のC.C.C最高位受賞作品なので、2014年のバレンタインにはこのボンボンショコラと板チョコ、両方買いました。 あまりに美味しくて、もっかい板チョコ、買いに行ったけど、関西のどのデパートでも完売でした。 ボンボンのほうはプラリネの香ばしさもあるので、香りも高くて、フリーズドライのカシュッとした感覚、またフリーズドライだったものが、水分を得ていくことで、食感も変わるので、本当にすばらしくオリジナリティのある作品。と、これまた大絶賛。 今回は、マリセル氏のあとに、マーティン氏も「とにかく、使われている材料がどれもこれも素晴らしくて、食べていて本当に幸せを感じますよ」と、いかにも包括的なチョコレート業界人らしいご発言。

金木犀×チャンチャンマイヨ63%

最初は金木犀の甘い香りがお抹茶の苦味とあうだろう、とおもって組み合わせる予定でいたそうですが・・・なんと、金木犀の香りをつけたクリームを、スタッフが、間違えて!!!チャンチャンマイヨ63%のチョコレートに混ぜてしまったとか。 当初はショックを受けた小山シェフだったそうですが、試食してみたら、チャンチャンマイヨの良さを、うまく金木犀の香りが引き出していて、なんともはーモニーがすばらしく、間違えたスタッフに思わず「ありがとう!」と感謝の言葉をかけたそうです(@_@) これは2016年のI.C.A のクリエイションボックス、または THE BEST というコレクションに入っています。 香りこそあんずのように甘ずっぱいですが、まったく果実がはいらないのに、非常にフルーティなところが、とても面白い、interesting chocoalteだ、と評判になったそうで、アメリカとワールドの両方で2016年度のゴールドを受賞しています。 ぽちっと黄色い点が落とされたビジュアルもパーフェクトだと、全体的な構成力も高く評価されたそうです。

醤油ヌーヴォー

この一粒で、2016年度C.C.Cの最高位とアメリカ、ワールドのシルバーを受賞してるという、恐ろしい?作品 京都でマグロに塗られた煮切り醤油にピンときて、マグロのように、脂ののったものを引き立てるものは、チョコレートになる、と思い、組み合せを、あれこれ想像していた時にフォアグラに奈良漬けをまいた料理にであい、奈良漬のようなお酒で、なにか、醤油にあいそうなもの、と膨らませていった結果、デミグラスソースの中の完熟ブドウの香りたどり着いた・・・とお話しされたと思います。(「奈良漬プラリネ」というボンボンが別あるので、引き合いに出されただけの話、をごっちゃにメモしてるかもしれません。不正確だったらごめんなさい) ブドウを使ったお酒の中でも、スペインのシェリー酒で「ペドロヒメネス」という、ペドロヒメネス種の干しブドウだけから作られたお酒には、お醤油との相性がよさそうなSavory elements を感じられたので、お酒は「ペドロヒメネス」を選び 土台になるチョコレートを、コロンビアのシェラネバダにして合わせてみたら、バランスもパーフェクトになって、醤油、シェリー酒が三位一体となった複雑でおくゆきのあるフレイバーが誕生した。 シェラネバダのなかでも、特にミルクチョコレートを選んだことで、様々な要素の橋渡しがうまくいって、すべてが喧嘩することなく、友達のようにまるくおさまった、と説明されていました。 3つの賞の同時受賞が、マリアージュの成功を物語ってる感じですね。

コブミカンの葉

コブミカン:Combava(フランス語):Kaffir lime(英語)ともいい、ミカン科の低木 葉っぱに、山椒のような風味があります 。 最近ではタイ料理のハーブとして、カフェライムリーフ粉末 / kaffir lime leafの名前で朝岡スパイス に、コブミカン/カフィアライムの名前で マスコットフーズ 、にも「コブミカン」はラインアップされています。タイでは主にバイマックルー・パイマックルと呼ばれているようです。 小山シェフは葉っぱを冷凍してフレッシュさをキープしたものをつかうのだそうですが、たしかに香りのインパクトは強烈。苦味のありそうな香りが鼻をつきぬけるのに、舌の上ではやさしいミルクチョコレートが溶けていく、なんとも不思議な体験 これはもう、嫌いな人がいないような「キャンディー・フレイバー」だけど、それがおそろしく洗練されていますね、とマーティン氏が、控えめに補足されていました。

抹茶&プラリネアマゾン

抹茶のガナッシュとヘーゼルナッツのプラリネに、アマゾン産のフルーツ:ククアス、アセロラ、グアバ、アラクージャ(パッションフルーツ)などの香りも酸味の強いものをあわせたもの。 いいチョコレートは味だけでなく食感も大事だけど、とくにこのプラリネは、口にいれて、噛んだときの感触がいい。ナイスバイト:Nice Bite だね、とのマーティン氏評。 「抹茶&プラリネアマゾン」は抹茶とプラリネの間に薄~いチョコの層が挟んであるんですが、なんと、外のコーティングとは、配合などが違うチョコなんだそうで、セミナー受講者の方から、質問されて、小山シェフのほうが「わかるんや~~!」とびっくり!!! 中央のものは「イタクジャ:ITAKUJYA」というバローナの55% チョコを土台にしたそうですが、ドゥ―ブル・フェルマンタシオン(二重発酵)という革新的技術を使用した製品、ということで、2017年の小山シェフのテーマの一つ「発酵」ともリンクしてますね。
ドゥ―ブル・フェルマンタシオン(二重発酵)という革新的技術を使用した製品。 ブラジル産カカオを使用した「イタクジャ」には、発酵過程で同じテロワールで収穫されたパッションフルーツの果肉が加えられています。 はっきりとしたフルーツのアロマに続き、徐々に現れるブラジル産カカオのまろやかなカカオ感が特徴の製品です。 カカオの栽培地に由来するフルーツの恵みと、厳選したカカオのマリアージュ、これまでにはなかった新たなチョコレートの味わいをお愉しみいただけます。
「抹茶&プラリネアマゾン」の一粒は「アンダーグラウンド チョコレート アワード」というボックスに入ってます。 最初はこのチョコが見つからず、あれ?板の「抹茶&プラリネパッション」を特別に阪急用に作ったの?と思いましたが、「アンダーグラウンド チョコレート アワード」なるボックスが新登場してました。 2016年度は、なんとコンクールには35種類も出品されていたとかで、金・銀受賞した作品が多すぎて(アメリカアジアで32作品。ロンドンファイナルで24作品が入賞)毎年作る年度ごとのボックスに収まらなかったという・・・恐ろしさ。35のうち32って!打率高すぎ(@_@) 個人的には今年はミルクチョコレートが多く使われていて、凄く嬉しかったんですが、さて、来年はどんなものに出会えるのでしょう。すっごく楽しみです。