BODYSGALLEN

ウェールズの宿は BODYSGALLEN HALL ルレ・エ・シャトー加盟の高級ホテルである。これをなんと発音するのか、確認し忘れたのが悔やまれるが、ここも呆れるほど広い庭を擁し、ホテル内だけで、十分散歩の用が済む。

そもそも門から館が全然見えず、おっかなびっくりで坂道をゆるゆる登る。
「これは、マジで服がモノをいうかも…」と途中、トランクから帽子に手袋、上等の上着にパンプスを引っ張り出して、化け、さらに道を登る。

ホテルは丘の頂上に建っていた。古いのに非常によく手入れされ、個人的には今回一番好きだったホテルである。

料理も非常に美味しかったし、なんというか、館全体に漂う雰囲気が、とっても柔らかく、つねに何かにくるまれているような、そんな感じが印象的だった。

さて、ホテルの建物近くまでは到達したものの、玄関までの道は進入禁止っぽく、悩んでいると、紳士が「どうかされましたか?」と声を掛けてくれる。

玄関まで車で行けないのか聞くと、宿泊なら、車はこちらで廻します、と言われ、ホテルの人であると知る。彼が先導してくれて、チェックイン。

そのまま部屋まで案内してもらったが、この時も部屋が本当に自慢、という感じで、「どうです、この展望!」とにこにこしながらドアを開けてくれる。

庭もコンウィ城も真正面。自慢するのも、もっともな展望である。
お姫さまになった気分。

夜などはライトアップされたお城が幻想的で、お伽の国を覗いているような錯覚を覚えた。

ここは最低のパック料金だったので、この部屋は運が良かったのか、着替えた成果か…

実はさっき先導してくれた支配人らしきこの紳士から「ひとこと言わせて戴けますならば、このような田舎ですのに、とてもエレガントな姿でお出ましくださった事、まことに嬉しゅう存じます」と、浮世離れした演劇的な挨拶を受け、めんくらったので、ちょっと勘ぐったような次第。

翌々日、別の人からも同様の言葉の調子で帽子を誉められ、ちょっと驚く。

「日の名残り」や「いつか晴れた日に」の世界である。
ここまで丁寧な言葉使いで話しかけられたのは初めてだったが、こういう言葉使いが、今でもあるところにはあるんだなぁ~と、妙に感心した。

駐車場にあった車はそういえば、高級車だけだった。

コンウィ城

ここに泊まって、お城を無視する訳にはイカンだろうと、まずは、 コンウィ城 に向かう。

ここは実際に戦闘華やかなりし頃の城で、出来てからはあまり活躍することはなかったらしいが、河口に位置し堅固で、いかにも城らしい。

城下町をかこむ城壁もきちんと残っていて、有名な「英国一小さい家」はこの城壁の外に、張り付くように建っている。

2 階が寝室、1 階には台所、というかストーブがあり、長椅子の座面の下は石炭貯蔵庫。壁面には食器棚。水廻りが欠落し、風呂はもちろんトイレや水道もないので、共同の井戸やトイレが消失した今となっては、独立した住居としては機能しないが、ここまでコンパクトに出来ると思うと、住まいというのは不思議なものである。

13 世紀のお城の内部は、木造部分が抜け落ち、近年まで住居として使われていたリーズ城や、現役のウィンザー城とは違い、兵どもが夢の跡、という雰囲気。

丁度このお城のボランティアが、小学生に解説していたので、写真を撮りながら拝聴したのだが、このボランティアの方の説明が非常に巧く、今にも騎士とお姫様の世界が、ホログラムの幻のように立ち現れてきそうだった。(@_@)

台所の諸事情もなかなか愉快に説明されていて、分かりやすく、思わず唸ってしまった。こういう人がいると、通り一遍の史跡も、実に興味深い、生きた舞台になるもんだなぁ、と感心する。

ボドナント・ガーデン:Bodnant Garden

そもそもウェールズまで足を伸ばした目的は ボドナント・ガーデン:Bodnant Garden だったので、お城はそこそこに切上げ、お庭に向かう。

なにがなんでも、有名な「きんぐさりの天井」を、と勢い込むが、入ってすぐのところだったので、胸をなでおろす。

盛りはちょっと過ぎた感じだったが、それでも結構な量感で、金色のしずくが頭上に降り注ぐような造りは見事。散々写真を撮りまくり、寝転ぶやら、飛びまわるやら、犬ころのようにはしゃぎまわって満足し、意気揚々と残りの園内探検へと向かう。

ボドナント・ガーデンに建つ館からはコンウィ渓谷の清清しい景色が堪能出来る。バラ園が思っていたより貧相で、香りがなく、ちょっとがっかりしたが、自然の傾斜を巧く取り入れて作られた、広大な庭園は、見応えも歩き応えも充分で、3 時間くらいあっという間。

前から来たカップルに道を譲るのに、延々道を引き返したり、あちこちで珍しい植物に引っかかったせいもあるが、閉園までに半分くらいしか踏破出来ず、ちょっと残念。

閉園のアナウンスを聞いても、広いので、門まで結構かかる。付属のショップが、半時間ほど遅くまで開いているのは、ここから出られるように、という配慮からだったようだが、もちろんここでもひっかかり、私はバラのキャンディーを購入。

これが、なんというか香水を舐めているようで、誰にあげても大不評。蜂蜜も買いかけたのだが、店員さんに「ここで採れたものじゃないけど、いい?」と忠告されて中止。

彼女は笑いながら「海外でしょ?重いのに、後で判ったらショックだと思って」と、レジを打つ。親切だなぁ

さて、目的も果たしたし、夕食まではまだ 3 時間ほどある。このまま帰れば、ゆっくり出来る … はずが、哀しきかな日本人。コンウィ城が結構良かったので、プリンス・オブ・ウェールズの戴冠式が催される Caernarfon 城 まで「ついで」に行って、ちょっとへばる。

写真で見る優美な姿は、間近からは得られず、近くで見ると、のっぺりした壁がそそり立っていただけで、がっくり。まさしく徒労であった。欲張ってはイカンのである、なにごとも。

ただ Caernarfon 城に行ったおかげで、スノードニアの裏表両方を見ることができたので、それが収穫といえば収穫。

どちらが表かはともかく、コンウィ側からの優しげな眺めとはまるで違って、反対側は荒々しく、木々もまばらで男性的。同じ山だとは思えないくらい、景色も受ける印象も、まるで違う。

この変わり身の早さはニュージーランドに近い。この険しい風景は、海からの風が強いせいなのか、緯度が高いせいで、長いこと西日にさらされたからなのか? なんにせよ不思議な感じだった。

ホテルの美味

今回はたまたま運が良かったのかBODYSGALLEN HALL の夕食も非常に美味だった。

窓際の席だったので、ここでは風景もごちそうの一部。

夏の宵は暮れるのも遅く、コンウィ城が徐々にぼやけたかと思うと、ほんのりライトアップされ、よみがえってくる。

闇が濃くなるにつれ、再びくっきりと、塔の姿が美しく浮かび上がり、非常にロマンチック。各テーブルの蝋燭が呼応するように輝いて、また美しい。

我々のテーブルでは、窓からの風で蝋が芸術的に流れ、減りが早いので、二晩とも途中で蝋燭が取り替えられた。蝋燭給仕の女性は替えながら、「こんなこと、めったにないんですよ」と恥ずかしそうに謝ってくれたのだが、キャンドルディナーなど、めったにありつけない私達には、面白くも貴重な体験で、楽しかった。

ここでもコノートと同じメニューが 2 皿あった。流行なのだろうか? もちろん細部は違うし、味付けも盛り付けも違うのだが、基本の食材は同じ。どこも美味しかったので、流行というよりは、定番なのかもしれない。

コノートは軽め、ワーズワースはオリエンタル風、ここはクラッシックな感じだった。これだけの庭があるので、野菜もハーブも自家製なのは当然として、蜂蜜やジャムも自前だと聞いて、びっくり。お土産に買うつもりだったのに、忘れて出立したのが、今もって心残りだ。

別室で、食後の珈琲を飲みながら、翌日の道程を打ち合わせ。ウェールズからコッツウォルズへ向かうのだが、高速をどぴゅンが、遠回りでも迷わず、多分一番速いはず。だが、つまらないといえばつまらない。

で、どうしようか散々悩んだあげく、時間的にも余裕があるし、A5 は曲がりなりにも幹線道路だから、と結局北ウェールズを抜け、英国との境を南下、ウースターからストウ・オン・ザ・ウォルドへの路をとることにした。

丸一日を移動に当てるんだから、悠々着くだろうと考えていたのだが… 旅行というよりは迷行で、予見できていたら、さて、どうしただろうか

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