庭園が素晴らしいホテル。グレートフォスターは実は歴史的にも意味のある建物。近隣の村も民主主義発祥の地という由緒正しき地域のせいか・・・イワクありげな事態に遭遇したのでその顛末も
水もしたたる
朝である。ぴちゅちゅ、ぴちゅちゅ、と小鳥の声も麗しく…「んっ?」なんだ?この「ぼと」って音は?
嫌々ながら眼を開けると、眼の前を水滴が落下していくではないか。「?」
しばらくは、それでもちょっと寝ぼけてたのだが「まっまさか!」
ぐわばっ、と起き上がると、天井には滲みが!
こりゃヤバイ。
即フロントに電話。相棒を起こすかどうか、迷う間もなく、フロントが到着。バケツ持参である。
とりあえずは、水を拭き、バケツを残して去っていった。
一連の物音に、起きてはいたが狸になっていた相棒は、しらじらしい寝息を止めるや、「何ごとっ?」
私の指さす先には、刻々と広がる滲みの地図が…「う」「とりあえず、着替える?」「うんっ」
急いで着替え、万一を考えて、荷物も一応まとめ直す。天井は水を含んで、ぷっくりしてきた。どうなるんだろう?
と、そこへやっと、ノックの音。上階のバスルームが原因で、今修理のヒトを呼んでいます。とのこと。この時を逃さず、この騒ぎで喰いっぱぐれた朝食がとれるかどうかを聞く私。
「もちろん、すぐに用意します」どんな時にも、食事だけは忘れない。我ながら、あっぱれな奴である。
どうせ山盛りで来るに違いない、と一皿ずつにしたのだが、果たして、十分過ぎるほどの量で来た。ハムもサーモンも美味しいのだが、いかんせん、コノートには負ける。
初めは抵抗していた彼女も、味比べの誘惑には勝てず、味見はする。
「これも、すごぉく」「美味しいのに…」「コノートには」「負けるねぇ」
丁度、ミルクが付いてきたので、午後からの遠出に備えて、カフェオレを作り、魔法瓶に入れる。そう、今回はレンタカーが長いので、魔法瓶も持って来たのである。
修理の具合で、部屋の移動もあるかもしれないが、とりあえずはこのまま、ということで、外出。
今日はロンドンで出しそびれた小包の投函がメインイベント。郵便局があるかどうか、昨日の村まで行って見ることにした。
村にはすぐ着いたのだが、駐車場が無い。狭いメイン道路を抜けると、もうそれで終わり。郵便局を発見したので、なんとか、ここで用事を済ませたい。どうしようか、と曲がると、メインストリートの裏が駐車場だった。やれやれ、と車を停め、いざ郵便局へ。
マグナカルタの村
郵便局で「こんな処まで来るなんて、熱心な歴史ファンなんだねぇ」と、感心してもらっちゃったので「 史跡でもあるのか」と見回すと、あった。
ででーん、と巨大な巻紙の像?が。
読んでみると、マグナカルタ… えええっ、英国大憲章?
成文の憲法がない英国では、これが、未だに基本になるのだろうか?
王の側から言えば大失策だが民衆の側からいえば大躍進。という説明を授業で聞いて、不思議に思った記憶がある。
そうかぁ、署名場所「ラニーミード: Runnymede」が近所にあることは「 National Trust」の地図に印があったけど、まさか、ドンピシャでココだったとは(@_@)
せっかくなので、村の地図を頼りに記念館を探すが、ソレらしき建物はない。縮尺が解らないので、もっと遠いのかもしれない、と諦める。
帰りにフィッシュ・アンド・チップスを見つけた友人は、英国でやりたい事、その一が出来る、とおおはしゃぎ。魚のフライ自体が苦手な私は、おっかなびっくりで付いていく。
見た目はアイスクリーム屋さんっぽいが、もちろんあるのは魚。
この店には他にもハンバーグなどもあった。が、モチロン頼むのはフィッシュ・アンド・チップス。
出てきたソレはとにかくデカイ。私など、思わず後ずさった程の迫力だ。
今朝は遅い上に充分食べたので、まだ食物は欲しくないのだが、コレを逃すと、二度とチャンスはないだろう。
好奇心に負け、ちょっとちぎってもらう。きちんと揚がっているので、思いのほか良かったが、も、いいです。
寿司御前 談 揚げ物が大好きな、私が、薦めます。確かに美味。満足感あり。 あーゆーの何百年も食べてりゃ、でっかくなるわさ
再度村の中心にもどり、地図をじ~っくり見ると、実際の署名場所はもう少し先の原っぱのようで、多分この巻紙の記念碑は観光用なんだろう。
この村 「EGHAM」 が、そんな由緒ある場所だったのには驚いたが、大きな町にあっさり到着出来ていたら、そもそも、ここに立ち寄ることもなかったので、偶然の不思議と、旅の面白さを実感した。
そう思ってみれば、明らかに住人ではない人の姿が、結構多い。子供の団体もいた。観光地とはまた違った、ひなびた歴史の村は、意外な収穫をもたらしてくれた
幽霊さわぎ
さて、部屋がどうなったかと、チェックに戻ると、ホテル側は、このままでも支障はないが、部屋を交換しても良い、というので、候補をみせてもらう。
最初の部屋はダブルだったのと、現代風すぎたので、却下。
次は 3階にある可愛い部屋だったのだが、入室するなり、冷や水を浴びたようにぞくぅ~っとなり、頭も痛い。すぐに部屋を飛び出し、ぷるぷるっ、と何度も身体を振る。
そんな私の姿に相棒も目が点。あっけにとられているボーイを尻目に、どびゅーんと階段を駆け下り、息も荒く懇願「こっこの部屋でいいですぅ」
「多分若い女の人。悲しそうに窓から、外見てる気配がした。出たいけど、出て行けない、そんなカンジなのよぉっ」 躍起となって状況説明に勤める私。
話の間にも、見えない霊をはらうかのように、腕を振りまわし、頭をブンブン振る言動がとーても怪しい・・・
そんな不審な様子をうろんな目つきで眺めながら、緊張感のない声で相棒が言う。
「ねぇ、上の階ってルームナンバー代わりに人名がついてたでしょ」「え?そぉなの」「うん。具体的には感じなかったけど、私もなんか暗いとは思ったの。日あたりかな、とも思ったんだけど」「部屋自体は明るかったよね」「うん。でね、その名前がドクターなの」 し~ん。
あとで、判ったことだが、一時ここは病院だったのだ。時代的にも、感じたイメージと合っていた。
困ったことに、手をお湯につけても、お茶を飲んでも身体が温まらない。今までこんな体験はしたことがなく、対処方が分からない。
ふと思いつき、モノは試し、とロンドンで購入したフラワーエッセンスを飲む。
と、あ~ら不思議。瞬時にぶあっと暖かくなった。
ウワサには聞いていたが、まさか自分で実験出来るとは思わなかった「悪霊払いには CRAB APPLE 」効果テキメンだ。
グレートフォスターちょこっとガイド
ここまで書けば今更ながら「ドコなの? そのホテルはっ」というお方もいるであろう。サリー州のグレートフォスターズ: GREAT FOSTERS である。
幽霊が出るほうが、不動産の価値が上がる様なお国柄。クレームが来ることもなかろう。但し幽霊そのものを見たわけではないので、念のため。
寿司御前 談 歴史をいろどったヒトの霊が、うじゃうじゃいよーと、今回の旅では一番素敵なホテルです。わたし的には。但し、旅の道連れは、霊感のない人としましょうね。 訳わかんない事が起こるしぃ~ 君の悪霊払いのほうが、よっぽど恐怖だったぜ
ここは 16世紀からの建物で、一人ずつしか入室できない入り口が、時代を感じさせる。
ヘンリー八世の狩猟の館だったこともあり、玄関にはエリザベス一世の紋が彫られている。
廊下の天井も漆喰仕上げにチュダーローズが美しく浮かび上がる。
服装に合わせ、廊下といえど、幅が広いのも印象的。
この館は他にも変わった人に関りがあり、ヘンリー・パーシー、第 9 代ノーザンバーランド伯。錬金術やら占星術に多大な興味をもち、天井の模様あだ名が「魔法使い伯爵」だったというから、ハリーポッター・ロケ地巡りの旅には、なんとも似つかわしい。
パーシーという名前ともども、ちょっとニヤリとさせられたのであった。
パーシー伯はエリザベス一世の次、ジェームズ一世の時代に起きた「火薬陰謀事件」 に連座して、15年もロンドン塔に収監されていたというから、入口のエリザベス1世の紋章とは、因縁浅からぬものがあったとみえる。
11月5日の祭り「ガイ・フォークス は、この「爆破テロ未遂事件」の記念日。
ダンブルドアのペットの不死鳥、フォークスの名前もここから取ったとの事だから、ハリーポッターともちょっと因縁めいている。
それにしても、爆破の失敗を記念して、花火で祝うあたり、なんともイギリスらしい。この後も「居眠り判事」氏や「貧しき者の医師 」にして「ジョージ三世の主治医」
養鶏に熱中した地主などを経て、20 世紀初頭に、再び王室のメンバーが訪れるようなホテルになった、とホテル史は語っている。
見ることは出来なかったが、エリザベス一世の母にして、ヘンリー八世の第二の妃、アン・ブーリンの名を冠した部屋もあり、天井には漆喰で紋章が描かれているらしい。
ホテルの中は、この時代らしく、板張りの壁が多く、あちこちに置かれているチェストなどもどっしり。
窓も、リーズ城と同じような窓のつくり。当時は高価で貴重だったガラスは小さく、鉛でできた枠でステンドグラスのようにガッチリ支えている。窓枠はまだ石の時代だ。
17 世紀には、螺旋階段の中心部分が吹き抜けになり、それにつれ、手摺や柱の装飾が始まるのだが、その良い例がここの階段。
丁度、和室において欄間の装飾が発達していくような感じなのだろう。和室の続き部屋がなくなりつつある今、欄間も過去の景色となりつつあるが、建築物は生活に密着しているだけに、盛衰が激しく、外観はともかく、内装の流行サイクルは意外と短い。
ウィンザー城まで一っ走り
わたしがそのままホテルに居たくなかったので、とりあえず出る。
ハリー・ポッターのおじさんの家もこ辺でロケされた、と知ってはいたが、よくワカランので、テキトーに走ってみる。後で調べると、EGHAM からは 10キロほど西のBRACKNELLでロケされたとのこと。
似たような住宅地を走っていると、お城が見えてきた。
そうそう、ここはウィンザーに近いはずだ。行こう、行こう、とあてずっぽうで走り出す。
折りよく散歩中の住人を捉まえ、道を聞く。ホテルでもらった地図は「これはイケナイ」と一蹴され、左折して、右折したら、あとは標示が出るから、それに沿って行きなさい。「ウィンザー、ウインザー、ウインザー、いいね?」うんうん、とメモリながら、復唱する。
「ウインザー、ウィンザーウィンザー」お互いにっこりして、握手。これをお題目のように唱えながら、お城を目指す。
果たして、標識には常に表示があったので、迷うことなく到着。おおおっ、お城だ。
さすがに現役のせいか、生気がある。
駅に近いのも面白い。
空いていたので、スイスイと。
入場料が2300 円ほど、と商売上手な王室である。
時間があまり無いので、ドールズハウスにまず向かう。さすがに豪華。人形のための下着やら化粧用具、小物類も精緻で美しい。ここは比較的狭かったので、ちょっと休憩しただけで、何気なくアパートメントに足を踏み入れた。
ら、豪華だが、込み入った館の中を、中途離脱も休憩も許されず、1時間以上も歩くハメに。
出てきた時には、やっと開放された! という安堵が先に立ち、女王様の住居を見たのよぉ~という感慨は、手繰りよせねば、出てこない。
王様の暮らしも、なかなかに大変かも。
行きはヨイヨイ帰りはコワイ。
来る時は標識があったが、帰りにはないのであった。
そうと気づいた頃には本屋はすでに閉店。インフォメーションでも地図を探したが、イートンや城下の詳細図が多く、必要なものがなかったので、結局あきらめ、記憶だけを頼りに、来たハズの道を引き返す。
この季節、9時頃まで明るいのが、唯一の救いだ。
交差点や分岐路にあたる度に、度胸試しされてる気分。
2 度間違えただけで、なんとか帰着。やれめでたや
またまたルームサービス
夕食は予約しなかったので、席がなく、ショック。
せっかくドレスアップしたのに… バーなら軽い食べ物がある、というのでバーに向かう。注文もすませ、くつろいでいたのだが、いかんせん寒い。
あまりに寒いので、部屋に持ってきてもらえるか確認するとOK だったので、部屋で待つことにした。
英国では、結構なんでも部屋まで持ってきてもらえるから好きさ。この時はルームサービスのチャージがつかなかったが、バーで注文したからだろうか?
部屋で待つ間、今日の地図なしドライブの件で盛り上がり、ふと、明日無事に空港まで戻れるか、という話になる。
食事を運んでくれた人に、その事を伝えると、地図かなにか、持ってきます。と頼もしいお言葉。
持ってきてくれた詳細な地図を見ながら、記憶と照らしあわせる。
最終日にしてやっと、ホテルの位置が理解出来たのだが、こりゃ難しい。初日に迷ったわけだ。
んなのがあるんなら、ちゃんとサイトに載せておいて欲しかった。広域図だけで、よくぞ、たどりつけたもんである。
何度もフロントで「詳しい地図はないの?」と聞いたのに、今まで出てこなかったのも謎。迷わせて喜んでいた、とか? うぅ~む
ここで新発見。さてさてなんと、2005 年初頭に調べたら map の処に、前ページに載せた地図が載っているではあぁ~りませんか!誰かチクった?なぁ~んてことはないだろうが、ヴァージニアウォーターへ、レンタカーで行こう、と思う方には、参考になると思います。