2003 年 6 月。庭園と豪華田舎ホテルを求め、妙齢の日本女性二人が機上のヒトとなった。
旅はじめ
くしくも片方が誕生日。ケーキを頼めるというので、予めお願いしておいた。
ケーキは「小さいから、食べきれます」の直径 15cm だったが、横の日本人におすそ分けしてもまだ二人では食べきれない。
やさしいアテンダントさんが、包んでくれた残りのケーキ。箱がチト邪魔だが悩んだ末に持って降りる。まさかこれが夕食になるとは思わなかったが…
6時頃ホテルに着き、散歩がてらの夕食探しにでた。相棒がデリでお寿司を購入したが、これが、ひょっとして腐ってる??? なブツだったのだ。
私が購入した独り分のサンドイッチではもたず、二人で思わずケーキを拝んだ。
今度の旅の相棒は、正統派ジャパニーズ。ご近所、親類縁者への気配りも甲斐甲斐しく、あまつさえ寿司が好物。お米がないと禁断症状が出る、同行者としては初めてのタイプ。
この最初の 「 sushi 」ショックで回転寿司を諦めてくれたので、私はほっとしたのだが、以来寿司探偵と化した彼女は、行く先々で眼を光らせるのであった。
「 いやん。いやん。こんなのお寿司じゃなぁいぃ~い!」 夜空に哀しくコダマする彼女の声を聞きながら、お寿司が苦手で良かったなぁ、とシミジミ安堵する、お友達がいのない私なのであった。
寿司御前 談 カチカチの寿司飯で、解凍後の型抜き弁当のようでした。あまりの落胆で、涙も出なかったよ。 なんなら、あたし、握りますが
コノート:The Connaught
ロンドンの宿は、聞いて驚けコノートだ!ものの本によるとザ・コノート:The Connaughtは「邦人では社長以下の人間が泊まる事などない」ホテルなんだそうだ。
帰ってからその本を読んだ主婦と、限りなくプータローに近いフリーのインテリアコーディネーターは「ここを推したは、そちじゃったな」 「お決めになったのは、お代官様」 「なに? ワシのせいと申すか」 などど、お互いに見苦しく罪をなすくりあったのであった。
実際には派手な装飾もなく、こじんまりと居心地の良いホテルで、スタッフはみなプロ。
我々がふさわしく見えなかろうと、そんなそぶりは微塵も見せず、以前泣かされた、某ホテルとはえらい違いだった。
が、お客様には快く思われない向きも居られたようで、そういう方々の目つきがスゴかった。ごめんねぇ、階級をワキマエないヨソモンでさぁ、んべぇ=っ、と、それはそれで、結構楽しかったが・・・
チェックインの時は 「 マダム 」 と呼ばれ、「 英国で初めてマダムと呼んでもらえたぁ~ 」 と、二人手を取り合って喜ぶも、コンシェルジェの面々の妙~に慈しむような眼が…
頭では解っているのに、子供に見えて仕方ない、という感じ。
おもちゃの “ Hamleys ” の袋を手に、ホテルに帰還した時など、頭をなでられるんじゃないかと身構えたくらいだ。
色々助けてもらったが、最後日、レンタカー会社に、到着が遅れる旨連絡して貰ったら「えっ、運転っ?!」「出来るの?」 と、皆がびっくりし、心配そうな、感心したような顔が可笑しかった。
「頑張るんだよ」の身振りで見送ってもらい、親戚のオジサン達のようで、ほのぼのした
“ The Connaught ” は確かに一度は泊まってみたいホテルだったが、宿泊費が高いし、どちらかというと男性的なイメージだったので、独りで泊まるのは論外。
父がロンドンへ行っても良い、と口を滑らせれば、その時にしよう、と狙っていた処だ。
今回いろんなホテルのブローシャーを見て、彼女が気に入ったのが、コノートのパンフに載った、花! 「 この活け方が好い 」 というので、ここになった。
彼女はフラワーデザイナー。「私には、これが最初で最後のロンドンかもしれないんだから、花で決めたっていいよね」と、決定。
部屋の仕様をあれこれとメールで打ち合わせたが、ウルサイ客に慣れているせいか、非常に丁寧に応対してもらい、安心して赴けた。
広い部屋で浴室に窓があるのは、総てコネクトルームとのことで、狭いほうを取ったが、ここなら音漏れなどなかったかもしれない。うぅ~ん。死ぬまでに試せればいいな
メイフェアの朝
お貴族さまの居住地として名高いメイフェア。
今朝は “ Richoux ” という老舗カフェでブランチ。
私はニューヨーカーというメニュー。フレンチトーストがニューヨーカーとはこれ如何に? と思いつつ、地図を広げながらのパワーブレックファスト。
土曜日のせいか子連れで食べに来た若夫婦が 2組。共にお綺麗に着飾り、子供もいかにも品が良い。が、なぜか、子供が食べているのはどちらの組もフライドポテトだけ!
そのうち何か来るのかなぁ~と思っているうちに、お食事終了。良妻賢母の友人の眼が燃える。「いいのか、あんな食事でぇっ」
とりあえず、私の目当ての店に行き、キングスクロス駅まで一緒であとは別行動、という段取りに決定。
その間、横の優雅なオバァサマ二人と孫娘と思しき方々が、私達をきっかけに、知人友人有名人色々取り混ぜ、日本人に対する所見を述べている。
ロンドンともなれば、様々な分野に日本人はいるわけで、中々面白い話が聴けたが、最後にオバァサマがけだるげに「それで、この子達(ムロン我々の事である)はどれくらいの歳なのかしら?」と孫に質問した。
孫の答えは「20代後半」だった。思わず噴出したところでもう片方のオバァサマと目があってしまい、仕方なく、お互いに~っこり。
それまでの優雅で怠惰そ~ぉな風情がパッと消え、彼女らはソソクサと出て行った。壁に耳あり障子に目あり。ウワサ話は小声でね。
まずは私のお目当。ホメオパシーの薬局だ。日本では入手しづらいホメオパシー。特に花粉症用の目薬を、どばっと購入。
ユーフラシア:EUPHRASIAというハーブの目薬なのだが、朝させば、ほぼ一日保つので、重宝している。おまけに段々と症状が軽くなってきたので、余程私の体質に合っているんだろう。
眼からくる花粉症の方は、試されてみても良いかも。通常のドラッグストアには、日本と同じく薬品系の物しかないので、試してみようという方は、アロマセラピーやホメオパシーを扱う処で聞いてください。
ホメオパシー薬局 ⇒ Homeopathic Pharmacy
ユーフラシア ⇒ EUPHRASIA
外国で処方箋薬局のような処に入るなど中々ないので、相棒は感心することしきり。アロマセラピーに慣れてると、品揃えにさほど差がないので、むしろ買いやすい。
サプリメントも豊富。もちろん自然由来の製品で、オーガニックが多い。この時迷いまくった末、彼女が買ったのは、ローズウォーター。常に本物の花に囲まれた生活だと、不自然な花の香りを受け付けなくなるのだそうで、そのお眼鏡にかなったのだから、優秀だ。
その他にはハーブのティーバッグ類を購入。たいした量ではないが、荷物は無いほうが良かろうと、一度ホテルへ戻る。街中の宿はこれが出来るから好きさ
キングスクロス駅:King'sCross
地下鉄でハリーポッターのロケ地、キングスクロス駅に向かう。どんな駅なんだろう、とワクワク。はやるココロを押さえ、行動手順をチェック。
地下鉄から地上の駅までがかなり複雑だったので、下見に来てよかった!階段が多く、トランクでの移動するにはエレベーターなどの場所をチェックしておくべしだな。
まずは日本でネット予約・購入済みの、1 週間後のエジンバラ ⇒ 湖水地方間の切符を、自動切符受取機にて入手。
エジンバラでも、もちろん受け取れるのだが、トラブルがないとも限らないので時間に余裕があるほうが安心、とゼッタイに行くであろう、この駅で受け取るよう指定しておいた。
今回はすんなりいったが、後々鉄道にはメンドウがつきまとったので、早目早目の対応が 「 英国鉄道の心得 」 と思い知ることになる。
キングスクロス駅:King'sCross駅は 8 番線までと、9 番線からが違う場所にあり、ちょっと戸惑う。
矢印に従って駅を半分ほど進み、左折すると、まずそこに見えるのは、撮影用の 9 と 3/4 番線のレンガ壁。もちろん大盛況で、ひっきりなしに撮影されてる。
記念撮影我々も記念に撮影。はい、ポーズ。ワクワクしながらさらに奥のプラットフォームへ… が、そこは、小さく囲われ、寂しげ。
2車線しかないのだから、当然なのだが… ううぅ~ん。ホグワーツ急行が出るような雰囲気はなく、即回れ右。
とぼとぼと駅を戻り、多分これが、ハグリットとハリーが歩いていた鉄橋、と思える場所に行ってみる。白いパネルが張られ、かなり違う雰囲気ながら、どう見てもそうなので、いちおう此処でも記念撮影。
ちょっと拍子抜けの態で「んじゃ、ここでお茶でもして、別れる?」などと喋りながら、到着時に見えた本屋を目指す。と、左手に見覚えのある景色が見えてくるではないか!
「ここだ! ここ!」 4番と5番の間のプラットフォームが、映画で使われた場所だったのだ! 丁度そこには柵があり、残念ながら入ることは出来なかったが、見る事が出来ただけでも大満足である。
柱がアーチ型というのは、英国でも珍しいのだろうか? 実際にも良い雰囲気である。
本屋には、もちろんハリーの本があり、「 ここで発売記念イベントがあった時は、さぞ盛り上がっただろうねぇ 」「 そういえば、今度の新刊発売日は何日だっけ?」「 う… 」「 どッかに告知とか、貼ってない?」「 ない 」「 ど=しよう、私友達に買ってくるよう頼まれてたんだった 」「 てことは、滞在中に発売日があるんじゃないの?」「 出発の日だったら、空港で買えるかなぁ 」「 う=む 」
ひとしきり疲れたあと、結局このモンダイは今後の課題とし、時間的にお茶は諦めて、別れることにした。彼女はポートベローへ骨董狩り、私はインテリアショップへと向かう。
わたしは地下鉄よりバスが好きなので、バスを乗り継いで行ったのだが、渋滞が一層酷くなったのか、地下鉄なら 10分くらいのところに小一時間かかってしまい、びっくり。
卒業シーズン
夕食はVirginAtlanticの機内でアテンダントから教えてもらった、「 お勧めのお店 」 に行ってみることにした。
相棒がコンシェルジェに予約を頼んでくれたのだが、すごいスピードで、掛けては切り、掛けては切り、合間に 10時でも良いか?とか明日は?とか、確認しながら、メモ全部にあたってくれたそうだ。
8時に 2軒、席があったそうだが、一軒が遠かったので、しばらく考えて、タイ料理のほうを薦めてくれたらしい。
カレは全ての店を知っていて、電話番号などは、自前の手帳からだった、というから凄い。翌日 「 気に入ってもらえました? 」 と聞かれたのにも驚いた。
強面で無口な感じの人だったのだが、以後も彼だけでなく、コンシェルジェの面々は、実によく気を配ってくれ、一度ならず、他の宿泊客の発する、いやーな空気がなごんだ。
寿司御前 談 英語は堪忍してぇ、なのに一人で談判に行かされた。鬼
タイの宮廷料理 Blue Elephant は、世界的な有名店らしい。すごい混雑で、店内はまるで南国のよう。
一時この手の装飾が飲食業界で流行っていたなぁ~と思いつつ、席へ。店内活気があるというのか、とにかくザワついている。たまたま端っこの席だったので、ほっとした。
生花がふんだんに使われ、贅沢な感じだ。
タイ料理に詳しくないので、お互いテキトーに選んで頼む。お米料理に、オコゲの物があったので、それを頼んだんだが、これは失敗。かなり甘いうえ、寿司とはまた違う酸味が加わり、ちょっと苦しい味だった。が、他はどれも美味しくて、大満足。
私達の席の前には女の子の団体が二つ。ドレス姿が多かったので、結婚式の 2次会か、独身最後のパーティーか、と見ていたが、ふと気づくと、それぞれのテーブルに電飾付きの冠を被った女の子がいる。
あれこれ想像をめぐらした結果、到達した結論は 「 卒業パーティー 」
電飾の冠は、最優秀の生徒とか、そんな感じ? とにかく、すごい盛り上がりで、見ているだけで、楽しかった。
十日後のオックスフォードも、町中に紙吹雪がやたら散乱していたり、マントに帽子の集団があちこちにたむろっていたり、と卒業シーズンたけなわ。
テレビでは、折しもスコットランドのセント・アンドリュース大学を卒業した、ウィリアム王子の話題で持ちきりだった。