ロンドン4日目はサリー州への移動の日。レンタカーを借りて
配送奮闘記
部屋に帰ると、「 早く送って!」 と、荷物の山が催促。
さっきまでの優雅なお大尽気分は吹っ飛び、荷物を抱えてコンシェルジェに走る。
哀しいかな、私の思っているようなチープな手段を、彼らは知らず、話が噛み合わない。
結局私の小包は自分で出すことにしたが、巨大な花瓶が入った、巨大な荷物を送らねばならない相棒は、あせりまくる。
半分は、郵送なんて、簡単よぉ!と安請け合いした私の責任だ。
こんなデカイ荷物など、作ったことがないもので、その手の情報に疎かったのだ。空便でも送れたはずだが、どうすればいいのか、わからない。すったもんだの末、日通でトランクごと送るような格好で、手続きなど教えてもらう。
土産品は入れてはイケない、などキマリも多い。集荷までホテルに預けておくことにし、再びコンシェルジェに走る
寿司御前 談 7000円の花瓶に 送料が 24000円。 うー 失敗だったかしらん?? でもだって、見たこともないよーな、モダンな形だったんだぁ~
コンシェルジェでは、さっきから小包やらなにやら抱えてウロウロしてるもので、我々をみるや、ナンダナンダ、と 3 人も出てきてくれて、さっきの小包はどぉしたの?とか、心配してもらい、なんだか赤面。
ついでに、レンタカー事務所に遅刻の旨、伝えてもらう。と、電話を置くまで冷静沈着だった彼らがどよめく。
「運転っ?」「出来るの?」「どこまで?」「サリー」「あ・あ~ぁ!サリーかぁ!」近いので、安心したらしい。
「ドコから運転するの?」「フラム。市内は危ないから、そこから運転することにしたの」「よしよし」「それは良いアイデアだ!」 ほとんど、心配性の親戚のオジサンのノリである。
さっきまでのドタバタした様子など、知らないフリして、シズシズとチェックアウトに向かう。
もっとも、コンシェルジェのデスクはフロントの正面なので、バレバレなのだが…無事、チェックアウトも終え、いよいよお別れだ。
コンシェルジェのデスクは運悪く、人で一杯。
キチンと挨拶できずに残念だったが、ちらっちらっと眼で挨拶し、ドアを押す。
丁度、所用の途中の通りすがりの一人が、運転するマネをして、親指を立てて行ってくれた。ほんとうに有難う。あなた方のおかげで、どれほど心温まったかしれない。
こうして外に出てしまうと、ここに泊まっていたのが、まるで夢だったような気がする。
相棒としんみりしながら、かぼちゃの馬車ならぬ、タクシーに乗り込む。「良いとこだったねぇ」「うん」
レンタカーで若返る?
レンタカーは絶対オートマでなければならないので、日本から確約出来る大手を選んだ。交代で運転できるように、追加ドライバーの手続きもした。
相棒がパスポートを提出したとたん、さっきまでタメ口だった係員が、一瞬の沈黙の後、「サンキュー、マ・ダ~ム」と、ちょっとギクシャクしながら、コピーを撮りに消えた。
事務所では「え~っ!うっそぉ~!」「マジかよ」「オレ、見てくる」などなど大騒ぎしてるのがツツヌケ(^o^;)
さぁて、幾つだと思ったんでしょう。ちなみに彼女は小柄で、天然パーマも愛くるしく、とても大学生の母には見えないのだが、この後もあちこちで、この手の旋風を巻き起こした。バースでは15歳だと言われていたし、何度となく私の子供に間違われていた。
車のチェックなどは総て、メインドライバーたる相棒が担当したので、レンタカー事務所の男の子は益々興味深そう。
「ガソリンは、入れられなかったら、返却時に言ってもらえば、よろしいですので」と、口調もすっかり敬語調だ。「大丈夫。やってみたいし」と、答える彼女に、つい感心している。
「では、良いご旅行を」と、言われて走り出す。彼女はおおらかなので、現在地も確かめず、道も確かめず、発車。
私はといえば、慌ててトランクを開け、地図を探すお間抜けぶり。
地図は手元に持ったが、未だ現在地は不明なまま。相棒は運転が楽しくて、ルンルン走らせている。おおよその場所は解るものの、どっちへ向かっているのか解らず、不安に怯える私なのであった。
迷子る
当初あ地道をキューガーデンやリッチモンドなどかすりながら、ぼちぼち行く予定だったのだが、私の買った地図はヒト用で、ルートナンバーの記載がまるでない事に、この時初めて気づく。
地図を持たせりゃ天下一品、の自負が、もろくも崩れ去った瞬間だ。
広域図では大雑把すぎて、ここからの脱出経路すらおぼつかない。まだ日も高いので、あせりはないが、ロンドン都心に戻るのだけは避けたい。
とりあえずは、高速の入り口を目標に、なるべく広い道を目指す。迷いながらも「この辺でダニエル・ラドクリフが遊んでたかもっ!」などと言っては盛り上がる、お気楽な二人組だ。
さすがに高速 A4 の案内は、すぐに出てきて、ほっとしたのも束の間。ハマースミスの交差で、ミス。
あれれ?橋を渡ると… そこは、住宅地だった。
この橋がまた、どえらく派手。本体が抹茶色の吊橋で、金の装飾がデコレーションケーキのように施され、現役の橋というより、遊園地にある飾りものみたい。
しかも狭いのだ。
うろたえる間にも車は進む。渡った先の住宅地には、真昼のこととて人影もなく、あせる。「いいじゃん、いいじゃん。行ってみようよっ」と、のたまうドライバー。
控え目なはずの正統派日本婦人は、久々の運転で高揚し、今や暴走ドライバーと化している。とほほほほ。
まだ、たいして都心から離れてないはずなので、下手したら逆行しいてるかもっ、と思う私は、四六のがま状態
お!やった。中古車販売店に人影発見! 脱兎のごとく飛び出して、地図を突きつける。
おじさんに現在地をマルしてもらい、ほっとして車に戻る。
テムズを挟みレンタカー事務所の対岸にいたのである。
ターンして、橋に戻る。地図通り過ぎ、振り返ると、ケンラン豪華に 「 Hammersmith Bridge 」 の名があった。19世紀初頭の吊橋で、わりに有名らしい。
な~るほど。ビクトリア時代は橋もあんなだったのね~。凄い趣味だなぁ。
今度は慎重に… とはいえ、もう場所と方向が解ったので、気分的にはかなり楽。間違えても、軌跡をたどれるので、大丈夫。
A4 からロンドンをぐるっと囲む態の高速 M 25 に乗ると、あとは楽勝… のはずだったのだが・・・
M25 から、ジャンクション 13 で降りた…と思ったら、様子が変だ。似たような広さのまま、ずんすん行けてしまう。あっという間に別の高速に交差してしまった。仕方なくソレに乗り、下方で再度 M25 と合流していた 12 を目指す。到達し、降りようとすると… あれれれれ?
出口はどこだったの? (ジャンクション12は交差のみだったのです)で、再びあっという間にまた13 番。やれやれ。
今度は、慎重に… やった。降りた。が、方向を間違えていて、慌てて引き返す。
高速の上を越え、踏切りを越え、地図の通りだと思われる道を行く、が、う=ん。出てこない。
駅には EGHAM の文字。そうこうするうちに、三度 13番に到達…
仕切りなおして別ルートを取ると、今度はヴァージニア ウォーターという場所に出てしまった。
この辺なのは間違いないのだが… 岐路がどこも似たような景色なうえ、標示がローカルな地名なので、よく判らない。
とりあえず走りながら、建物などの順番と右左折をチェック。何度目かに怪しい二又を発見。その、怪しい二股を正しく選択すると、果たして看板が出てきた。ふぅぅうぅぅ~。
詳細な地図がないと、ここまで不便なものか、と驚く。
ともかくも到着出来たのは喜ばしい。地道でも1時間かからないはずだったのに、2時間以上も経過してしまっている。
おかげで折りよくティータイムに到着、と相成りましたのでございますが、街灯もなく、通行人もいないし、目印もないこのあたり。夜に来ていたらたどり着けただろうか、と、ちょっとぞっとした。
今は下のホテルの map の処にこの同じ地図が載っているので、レンタカーで、ヴァージニア ウォ-ターを目指す方は、ぜひお目通しを
庭園ホテルグレートフォスター:Great Foster
庭園ホテル
だだっ広い前庭に車を止め、嘘みたいに小さい正面玄関をくぐり、チェックイン。
この玄関のさらに内側に、さらに細く小さい木のドアがあって
眼の澄んだ、絵に描いたような美少年の案内で部屋へ向かう。15~6くらいだろうか、彼はにっこにこしながら「と=っても良いお部屋ですよ!」と嬉しそうだ。
ここのお坊ちゃまかもしれない。そういえば、高めのカテゴリーで予約したホテルだったな… と回想していると「ここですっ!」とご神託が下された。
そこには時代モノのぶっ厚~いドアが「何用じゃ」とでも言いだしそうに、でんっ、とある。
鍵の掛け方にもコツが要りそうだ。
ぎぎぎぎぎぃ~っ。
まず目に飛び込んできた、大きめの黄色の花柄に一瞬、たじろぐが、正面の窓からは庭が見渡せ、思わず「うわぁ~」と声が出る。彼はその反応に、いたくご満悦の様子で、せっせと荷物を運んでくれた。
エレベーターがないので、往復回数だけでも大変だったはずなのに、相変らず満面の笑みで、チップも受け取らずにお茶はここ?それとも下のテラス?と聞いてくれる。
ぽかぽかと良い天気だったので、テラスを選び、案内してもらう。
通りすがりに、宿泊客専用の小部屋や、レストランなど見せてもらいながらバーを抜け、庭へ。
正面にはフランス風の庭園が広がっているのだが、奥の林が巧く造られていて、実際より随分と奥行きがあるように見える。
風にそよぐ木々を見ているだけで癒される感じだ。
「キューガーデンだとか、寄り道出来なくて、良かったかもね… 」「うん、この時間にここに居られるのって奇跡かも」「明日はどっか行く?やっぱり?」「貧乏性の日本人だかんのぉ」うだうだ言いながらの小一時間は、じつに贅沢な時間だった。
お茶のあと、テラスからは見えない部分の散策に出ると、これが、半端でなく好い庭で、
あわててカメラを取りに部屋に戻る。
Hidcote Manor Garden を思わせるようなWall Gardensでは、特に池に咲き乱れる白薔薇が見事だ。
これは幸先が善い。田舎のマナーハウスなどは、もちろん庭が広大で、見事な処が多いのだが、ここにお庭は、そんな中でも、かなりの水準なのではないだろうか?
実はこの館はエリザベス一世の母、アン・ブーリンゆかりの館でエリザベス一世の紋章が入り口に彫られているし、海賊ドレイクの日時計も庭にある、という由緒あるお館。
奥の果樹園まで、1 時間近く庭を堪能し、大満足で部屋へ戻る。
まわり回ってルームサービス
夕食を求め、再び車上の人となる。
来るときに見た町をめざしたのだが、これが、なかなかたどり着けない。どこを、どう間違っていたのか、ホテルに戻ってきてしまったり、小さい村には到達するのだが、目当ての町にはたどり着けないのである。
目印になるようなモノが極端に少ないため、イマイチ場所がのみ込みにくい。「どうすべ?」「あんまり遠出すると、ここに戻れない、とか?」「嫌な予感はするよね」「もう、ホテルでいんじゃない?」「そだねー」結局、食前のドライブをしただけで、ホテルに帰着。
レストランでシッカリ食べたいほどお腹も空いてないので、ルームサービスにした。
あまり期待はしていなかったのだが、到着したお皿は、みるからに美味しそう。
そして、本当に美味しかった。
う=ん。どうしたことだ。ホテルの食事が、美味しいじゃないか! 英国なのに… などと失礼なことを考えながら、食後のお茶は、セコくも部屋のお茶セットで入れる。
「ねぇねぇ。英国のホテルって不味いんじゃなかったの?」「う~ん。そのはずだったんだけど、向上したのか、ここが特別なのか」「明日はここのレストランで食べない?」「好いねぇ~」