2003年英国個人旅行2日目はパリへ弾丸日帰り旅行
ユーロスターはトラブルスター
今日は花のパリ。ユーロスターに乗りたいが為に、行くのである。
パリに一泊することも考えたが、第一目的はユーロスター乗車なので欲張らず、日帰りにした。
駅からパリの街中までの往復を差っぴくと、滞在時間は約 5 時間。パリに詳しい友人に相談すると、「1箇所に集中し、移動はタクシーで」 との事。
それでも、室内装飾美術館くらいなら小さいし、じゅうぶん観られるだろうと踏んでいたのだが、そもそも乗車時から出鼻をくじかれる。
予約が一人分しかなかったのだ。それのチェックだけで 20分近く経過。
不安になって、帰路の発券も英語が通じるロンドンで済ましておこう、とお願いすると、帰路は予約すらない。げげ=っ 冗談はよせ=っ!
横の窓口のオバサンは超イジワルで、ほんの少しの不備でも「NO」 だったが、幸か不幸か、私達の担当は親切な女性で、帰路の為に、文字通り走り廻ってくれた。
しかしこれでまた 10 分。この日は日曜のせいか、当日窓口には 3人しかおらず、それでなくても長蛇の列なのに、我々だけで、すでに 30 分かかっている。発車 30分前には入場していなければならないのに、すでにその時間さえ危うい。
一時間以上の余裕をもって来たのに、このあり様である。
彼女は券をくれながら、「すでに時間オーバーだが、乗れるので、大丈夫。それより、後の人達が怒ってるから、横から出なさい」 と親切な助言までくれた。
当日窓口なんだから、後の人の中には、希望時間に乗り遅れた人がいたはずである。そう思うと空恐ろしい。
さて、改札を通ろうとすると、「もう乗れない」 と言い渡される。
「え=っ、窓口では、乗れると言った」と抗議。一緒にまた窓口へ戻ると、今度はさっきの女性が、怒り出す。「乗れるでしょう!」「乗れない!」
あちこちへ連絡し、すったもんだの末、結局乗れないとのこと。
窓口の女性は怒り狂いながら猛スピードで切符を作り直し、改札係りの案内で、最優先で入場。
1 時間くらい続いた緊張がやっと解け、周囲を見て廻る気力もなく、ぐったりしていると、相棒がぼそっと 「
「中止しても良かったのに・・・ 」
確かに。そのほうが正しい選択だった気がした。が、「今からあの改札を出て行く勇気ある?」「ない( ..)」というわけで、結局は行くことに・・・
目の前の列車で、発車までの経過を観察。
モノレールのように、事前に柵が閉まるでなし、発車寸前まで人が往来している。さっきも20 分近くあったのだから、どうみても乗れそうだ。スタッフ間の軋轢なのか? イジメなのか?
釈然としないまま、我々のユーロスターも発車。
車内はガラガラのうえ、期待していたような、華々しさはなく、高級通勤列車、といったような印象。
途中、黒人のアテンダントが涙を拭いていたり、と、なんとなくユーロスターのイメージは悪い。
トラブルの影
ショックが尾をひいているせいか、風景の印象もおぼろ。
フランスに入ると平野が続く、ぐらいの印象。到着した時は小雨まじりだったが、そんなパリが、気分的にも丁度合っていた。
トラブルに慣れている私は「 まぁ、こんな事もあるさ 」 くらいの感覚だったのだが、相棒にはこの一件が、ものすごくショックだったらしく、どんよぉ~っと暗い。
私とて、最初からこれだけの問題が控えていると知ってたら、中止して良かったのだが、次から次へと浮いてくる、新手のミスに気をとられ 「中止」 という選択肢が出て来なかったんだから仕方ない。
「争うくらいなら、退くほうが楽」な正統派やまとなでしこな相棒には、かなりキツイ展開だったようだ。
彼女とてわたしがとっていたのが「正当な要求行動」なのは重々承知だが、感覚が受け付けないのだ。
私達は物見遊山だが「大事な用がある人の時間を食ってるかもしれない」と、さすがに気配りのきく主婦。もう、気が気じゃなかったらしい。
私が「一方的にまくしたて、相手を奔走させている」図に見えてもいたようで、あわてて自己フォローに回る。
さっきの件は、実際のミスが当事者間ではなく、別の場所で起きていたので手順がややこしかったが、それだけに感情的なこじれはなく、何度も奥に消えたのはFAXで予約状況を確認していたから。
確認出来たからこそ、発券してくれたので、情けをかけてくれた訳でもなんでもない。そもそもこちらの手元にはきちんとプリントアウトした予約完了の書類があってのこと。
駅窓口の方が面倒がらずに動いてくれたのは有難かったが、それが仕事なので、当然といえば当然なのだ。
が、渡航 2日目のこの椿事。彼女がどれほど不安になったかは、よく解る。加えて私の、一歩も退かぬ、硬派な態度もマズかったようで、思いっきり怯えさせちゃったらしい。参ったなぁ~
国が違えばYES と NOの重さも違う
習慣の違う人間同士だと、相手をおもんばかる事、それ自体が難しい。
西欧文明ではどんなに些細なことでも、欲しいことはこちらから発しないと手に入らない。控え目な態度でいると、要望無し、と見なされる。
文化の差なので、優劣はないが、慣れてないと、このへんの呼吸はむつかしい。
日本で普通に暮してて「何かを主張しなければならない」ような場面は、そう多くない。
総じてミスの少ない国だし、日々の些事など、なにもそこまで、と万事に控えめだ。
私の場合、根が単純で粗雑なこともあり、洗練された忖度がらみのお付き合いより楽なので「主張する文化」に馴染むのも早かったが、気楽なはずの旅の身で、文化の違いに合わせて変われったって、そりゃ無理である。
ルパン三世のカリオストロの城じゃないけど、「意義なき時は沈黙をもって答える」なんてのが通用するのは、必要があれば伝えてくるはずだ、という了解があるからだ。
「 NO 」と反論しないのなら「 YES 」しかないだろう、というわけだ。
文法とは違い、欧米人にとって感覚的に「YES」は全面肯定の意志表示であって、後に「But」は続かない。
「NO」だけれども、ここまでなら譲歩するわ、というのが、基本的な考え方なのだ。
「グレーゾーンをどちらに置くか」の差にすぎないのだが、身に沁みついている感覚からくるものなので、感情もからんでくる。これがやっかいの種。
この手の国では、まず、相手を建てて、それからこちらの意見を言いましょう、などいう奥ゆかしい作法は通用しない。相手と違う点を見つけたら、まずそこを指摘し、妥協できるかどうかは、それからになる。
「自分の意見を述べる」のは、折りあう点を探す為、まずは「互いの望みを出し合う」作業だと思う。自己主張も強いが、相手の言い分を聞く耳も、相応に大きい。
きちんと要求すれば、杓子定規な日本より、余程ゆうずうがきく。
欧米の場合「こうして欲しい」 事に出くわしたら、億劫がらず、小さいことでも伝えてみると良いと思う。
ツアーだと、自分が矢面に立つ率は低いが、自力本願だと、タマ~に、矢が飛んできて、運が悪いと刺さっちゃったりする。当然自分で抜くしかないし、手当ても自力だ。
知恵がついてくると、かわし方も身について、そうそう怪我もしなくなる。ああ、私が図太くなったのは、きっと、ハードな旅のせいね。うん。きっとそうに違いない。
ちなみにポリネシアン系・アジア系などもともと温暖で食料も比較的入手やすい地域では「自分の好きにする」文化な気がするけど、どうでしょう?理屈が意味をなさないので、交渉相手としては一番難しい気がするんですが(@_@)
西欧でもラテン系は「オレ様」文化なので、約束とかあんま意味ない気がするよなぁ~
3時間でパリ食い倒れ
到着したパリ北駅はレトロな丸ぁるい街燈風のデザインとモダ~ンな雰囲気がミックスして風土の違いを感じさせる。
3 時間しか滞在できなくなったので、美術館や花屋は諦め、食料調達にマトを絞り、タクシーをぶっ飛ばす。
まずは腹ごしらえ。リュクサンブール公園の老舗「ダロワイヨ:DALLOYAU」でランチ。
2 階がレストランだが、時間もないし、路上のカフェで。パテとパンの簡単なものだったが、と=っても美味しく、おかげで、かなり気分が和らいだ。
美味なる食事はなによりもの癒しである。
「ダロワイヨ:DALLOYAU」は日本にもあるので、薦められたときは、え~~?という感じでしたが、パリのお店は流石に納得のお味でございました。
この時、隣で初老のご夫婦がお茶していたのだが、一度目のお茶とケーキを終え、しばし談笑、そのうちに二皿目のケーキが登場すると、これが、さっきのと同じ品。
この店の名物として、つとに名高い「オペラ」である。じ=っと凝視する我々に気付き、に~っこり。「Very Very Good ?」と、聞くと、照れ笑いしながら、「Excellent」ほんとうに、ぺろっ、と食べていった。
我々の後は素通しのガラスで、ケーキ達が目配せしながら待っている。なにがなんでも、ゼェッタイに買ってかえってやる!メラメラと闘志を燃やしながら、ランチを平らげた。
友人のリストのトップにあったチョコレート店は日曜で休みだったので、上位にあったここのチョコレートで手を打つ。自分たちには、無論、ケーキを購入。
デリの中から、キッシュとパンを数種と、おかずパイを購入し、あっという間に結構な量の荷物になってしまった。
「ダロワイヨ:DALLOYAU」は銀座にも店があり「お土産買い」の日本人慣れしているのか、驚く様子もなく、テキパキと捌いてくれたが、大昔、FOCHON で1Kgのマカロンを買わされた我が友人は、何度も問い直されて、店中からの視線が痛く、泣いたそうだ。
こんなことなら、土産のリクエストなんて受けるんじゃななかった、と己のココロの広さを呪ってたそうだが、私達だって、まさか、他の友人も皆同じものを所望していたとは知らなかったのだ。
類は友を呼ぶ。今回私の受けたリクエストも、こぞって食料だったんだから、ナニをかいわんや。
さて、もう一件、目当ての店があったのだが、さすがにそこに行くのに、この紙袋ではマズかろう、とかねて用意の別の袋に詰め替える。
何しろチョコの為に、日本から保冷バッグまで持参して来たのである。折りよく目の前はリュクサンブール公園だ。休日の賑わいなか、ベンチでせっせと荷造り。
唯一の誤算は。保冷剤をホテルで冷凍できず、イマイチ効果を期待しにくかったこと。
忘れていたが、英国のホテルには、湯沸かしはあっても、冷蔵庫がないのであった。今回のホテルも例にもれず、どこにも備え付けられていなかった。
ケーキを保冷袋に、他をテキトウに割り振るが、その間も、途切れることなくカップルが行く。その過半数が男同士で、前のベンチもご同様である。聞きしに勝る盛観。
次の的は「ジェラール・ミュロ:GERARD MULOT」北海道のホテル「ウインザー洞爺」 にも出店し、話題となった店。他にも関東には店があるらしいが、関西にはない。日本にある店の本家参りを目論んだ訳ではないのだが、そもそも日曜に開いてる店が少なく、昼食も取りたい、となると益々難しく、結局この二つに絞ったのであった。
ミュロに関しては、相当にパリに詳しく、かつ食道楽の友人のイチオシだったので、なにがなんでも、行くっきゃない状態で突撃。荷物もあったのでタクシーで乗り付ける。日曜のせいか、流しのタクシーがあまり無く、「ジェラール・ミュロ:GERARD MULOT」の近くでそのまま待機してもらい、店には私だけが出向いた。
細長い店内には、美味しそうなお惣菜がずら~り。暖め直さなくてもたべられそうな物を選び、購入。
ケーキもイチオシだと言われていたのだが、冷蔵庫のない英国に、これ以上持って帰っても… と涙をのむ。
包んでもらうのももどかしく、急いでタクシーに戻る。これで、パリの滞在はお仕舞いだ。
パリシテ島を通過しながら、ノートルダム寺院をちらっとおがみ、セーヌに威容を誇るルーブル宮に、ほほぉ~と感心し、観光は、ちょん。
セーヌの両岸には、白い建物が美しく並び、繊細な美しさを誇る。ロンドンより華奢な印象だ。ロンドンに比べタクシー代が安いので、最初支払う時、えらくまごつき、筆談で確認。
パリに住んでいた友人は、旅行なら、タクシーといっていたが、納得。
乗り換えの手間や、スリ、駅からの距離など総合すると、タクシーのほうが断然便利だ。ユーロ次第なので、割安感はその時により違うだろうが、日本よりは確実に安いので、安全対策としても、タクシーはお勧めである
お夜食
帰りのユーロスターは一本早い便に、今度はすんなり乗れた。
ロンドンには 7時半頃帰着。
忘れていたが、ユーロスターのビジネス席には軽食がついたので、帰りも列車内で食べた。
ロンドンに帰ってからレストランを探す気力もなく、疲れていただけに助かったが・・・ほんっとにただ、食べてるだけのパリの日帰り(..)
6月のロンドンは7時半ではまだ日も高く、不思議な感じ。
怒涛のチケット騒ぎから始まった今日一日が、白昼夢のようですらある。
ウオータールー国際駅から地下鉄に乗り換えボンド・ストリートまで。駅を登り、日曜の雑踏の中を抜けると、益々その感が強くなる。
さっきまでパリにいたんだよなぁ~、ヘンな感じ。
8 時にはもう部屋で戦利品をチェックできていた。
チョコレートなど、それぞれの土産に分けおえたら、ケーキの状態チェック。
時候がよく、まだ全然大丈夫だったので、ほっとする。
早速コーヒーを淹れ、オペラにとりかかる。「…(@_@)」「美味じゃ」「んまいのぉ」「これなら二つイケた」「現地で食べておけばよかった」「うぐぐぐ…」などと、およそ低レベルな会話をしながら、疲れを癒す。
コノートのような高級旅篭には、電気ポットがないのが難だが、お茶セットがあったので、そこに、通称 “ コポコポ ” を入れ、持参したコーヒーフィルター他一式で、はい、出来上がり。
日本で「コレを持っていく」と、見せた時の彼女の反応は「嘘だと言って」だったが、旅の最後には「これほど使えるとは思わなかった」に変更された。
そうだろ、そうだろ。この「どこでもお茶」道具は、頼もしい旅の供なのだ。これに、好みのお茶をダシパックに詰めた、自前のティーバッグがあれば、完璧。
私はルイボスティーやハーブティなど、カフェインレスのお茶を持参し、あとは現地調達するのが旅の楽しみでもある。
寿司御前 談 電気ポットの代わりに、このホテルには、部屋に帰ると、さっと現れ「お茶はどこに?」とか、「 追加のお茶の銘柄は?」なんて聞いてくれる若人がいるのよ。イケメンの屋敷しもべ ドビーの出現かと。素晴らしい!!
今日はヘンな時間にヘンに食べたので、結局根性で買った「ジェラール・ミュロ:GERARD MULOT」のお惣菜が余った格好。
明日の朝にでも喰う? などと言いながら就寝したが、夜中にどちらともなく起き出して「お腹減った」「そだっ!アレ食べよう!アレ」と、とりかかる。
時刻は2時 52分。丁度丑三つ時。
お茶だけルームサービスで頼んだが、にこやか迅速丁寧なサービスで熱々のお紅茶が届けられるのに癒される。
メインは冷え切った鶏とポテトだったのに、これが、バカうま。ちょっと感動ものの味だった。
味はソースが決め手です。
思わず相棒に「コレから先、こんな味には出会えないと思うよ」と洩らす私。「うん。パリ行って、良かったね」しんみりしながら、夜食を終えたのであった